旧・大社駅(駅舎)【重要文化財】【近代化産業遺産】
造営年
1912年(明治45年)6月
再建年(改築)
1924年(大正13年)
建築様式(造り)
木造平屋1階建
正面妻入・向拝付
屋根の造り
桟瓦葺
建築面積
441.23平方メートル
設計者
丹羽三雄
監督官
川久保嘉一
現場監督官
荒川稲美
デザイン
伊東忠太
重要文化財指定年月日
2004年(平成16年)7月6日
近代化産業遺産登録指定年月日
2009年(平成21年)
旧JR大社駅(駅舎)の読み方
旧大社駅は「きゅうたいしゃえき」と呼称します。
旧JR大社駅(駅舎)の歴史・由来
大社駅は、出雲大社の鉄道における最寄り駅と言うことで1912年(明治45年)に造営された旧・国鉄「出雲今市線」の駅舎になります。
駅舎の景観は中央の母屋部分を中心として中央前面に「車寄せ」があり、左右にも比翼型に建屋が開き中央母屋と連絡しています。
しかし、この大社駅が造営される前は何処に駅を造るのか地元でかなりモメたそうです。
実は江戸時代には、この大社駅から出雲大社へ至るまでの参道が2つ存在していました。
その参道と言うのが大社駅からみて左を通る「市場通り」と右手を通る「馬場通り」です。
これらの参道はいずれも江戸時代から続く繁華街で店が軒を連ね、いずれかの通りの付近に駅が建設されれば、当然、片方の通りが廃れるのは目に見えています。
以上のような理由から、激しい口論が繰り広げられたそうです。
しかし、いっこうに計画が進まないことから、ついに妥協案が飛び出すことになります。
その妥協案と言うのが「双方の駅から等しい距離の場所に駅舎を建設する」と言う案です。
話はこれで決着してようやく建設が開始され、やっと一段落したかに見えましたが・・、ところがドッこい!
なんと!駅は完成したものの肝心なことを忘れていたことに気づいたのです。
その肝心なものと言うのは、出雲大社へ参拝する「参拝者への配慮」です。
つまり、互いの通りの利益しか見ていなかったために、出雲大社の境内から駅舎があまりにも離れすぎたことに気付いたのです。(距離:約2.5Km/所要時間にして約30分ほど)
そこでまた話し合いが行われ、今度は参拝者への配慮を優先的に考えた案で話がまとまりました。
その案と言うのが大社の正門となる「勢溜の鳥居」の前(神苑)から「大社駅」までの間に新しく「通り」を造ろうと言う案です。
そして、新たに通りが誕生することになりますが・・ちなみにこの通り名前、何だかお分かりになりますか?
・・そうです。
この通りこそが現在ではスッカリお馴染みになった「神門通り」です。
その後、1987年(昭和62年)に国鉄が民営化になってJRへと社名が変更になり、同時じJR大社駅へと駅名が変更になっています。
そして、しばらくして再び問題が巻き起こります。
せっかく神門通りを造ったのですが、なんと!1990年(平成2年)にJR大社線が廃止になってしまったのです。
当然、参拝客は交通の便が悪いので次第に減少し、完成したばかりの神門通りもスッカリ廃れてしまいました。
そこで再び話し合いが行われることになり、その結果「縁結び」と言う部分にフォーカスして、もっと女性客を呼びこもうと言う案にまとまりました。
女性客がたくさん訪れることでクチコミのスパイラルが期待でき、つまりは大きな宣伝効果を目論んだワケです。
さっそく通り内ではコンセプトに沿った改革が行われ、勾玉を用いたアクセや占い、雑貨など女性向けの商品を多く取り扱うお店や、女性をターゲットにした商品の開発が進み、通りのお店の改装も行われました。
その結果・・なんと!年数を経るごとに序々に女性参拝客が増え、クチコミやメディアなどで広く紹介されることになりスパイラルが巻き起こりました。
そして、女性客だけではなくクチコミや宣伝を耳にした男性客までもが訪れるようになり、序々に遠のいた客足も戻ってきました。
当初は約20にも満たなかった店の数も平成28年現在では、軽く100を超える店が軒を連ねるまでになっています。
ちなみに平成28年現在、出雲大社へいったい年間何人の方が参拝に訪れているかお分かりになりますか?
・・実はぬぅあんと!
年間約800万人!!もの方が島根県の西の果てにある出雲大社まで足を運んでくださっています。(伊勢神宮は約1400万人)
これは驚きを通りこして驚愕の数字です!
尚、この旧大社駅舎は2004年(平成16年)7月6日に「国指定重要文化財」、次いで2009年(平成21年)には「近代化産業遺産」に登録されています。
近代化産業遺産とは、経済産業省が行っている文化財保護活動です。
何でJR大社線は廃止されちゃったの?「廃止された理由」
採算性の悪さ
JR大社線が廃止された理由は様々あるようですが、根幹の部分にあるのが採算性の悪さです。
平日と土日祝日の利用客数の違いによる運営の難しさや、地方における過疎化が進み若者は都会へ移り住み、年月を経るごとに段々と利用する人が減少してきたことにあります。
具体的な金額は分かりかねますが、かなり赤字が累積していたようです。
一畑電車の出雲大社前駅が開業したため
もう1つの理由として、一畑電車の川跡駅から出雲大社前までの大社線が1930年2月2日に開通したことも理由に挙げられます。
つまり乗客の減少に拍車がかかったと言うことになります。
自動車の需要が増加したため
1964年の東京オリンピックでは日本経済が大きく潤い、自動車を持つ家庭が増加しました。
つまり、公共交通機関を利用する人が減少し、逆に自動車で外出する人が増えた背景も理由に挙げられます。
駅の立地の悪さ
もう1つの大きな理由としては、やはり「駅の立地の悪さ」が挙げられます。
当時では出雲大社の電車輸送における最寄り駅であったとしても、あまりにも大社の境内と距離があります。
つまり、これも理由の1つに挙げられています。
旧JR大社駅(駅舎)の建築様式(造り)と駅舎内部
駅舎の天井は格子天井、四辺は長押が取り巻き、内部に入ると分かりますが明治時代の匂いが鼻につきます。
また、昔の切符切りのカウンターや切符売り場、要人の待機場所として使用されていた貴賓室(きひんしつ)、駅長室などの職員の部屋には当時使用されいた備品や調度品などが当時のままの姿で現存しています。
展示されていると言うよりは、そのまま現存していると言った解釈の方が良いかも知れません。
旧大社駅は、明治時代の文明開化の時代に建てられた西洋風のモダン風建築であり、天井には昔の貴族の邸宅を彷彿とさせる豪華な提灯の形状をした照明が設置されています。
駅舎内のベンチも木製の味のあるベンチで、アンティーク店に売ればボロ儲けできそうな高級ベンチと言えます。(窃盗は犯罪です)
旧JR大社駅(駅舎)の見どころ
D51形蒸気機関車
旧・大社駅で忘れてならない見どころに、文明開化の時代を支えた「蒸気機関車」があります。
この蒸気機関車は「D51形蒸気機関車」と呼称し、かつて、大社線を実際に走行していた蒸気機関車になります。
この蒸気機関車は1942年(昭和17年)9月7日に製造され後、約32年間1日も休むことなく大社線以外にも本州の各路線を走行した蒸気機関車になります。
同時に蒸気機関車が現在の電気式の電車に完全に切り替わるその時まで、最後まで運行した蒸気機関車になります。
ちなみにその最後の日と言うのが1974年(昭和49年)11月30日になります。
以降、大社町・出雲大社とJRとの話し合いで出雲大社が引き取る形で、かつては大社境内の神苑に展示されていましたが、現在はこの旧・大社駅に移されてヒッソリと展示されています。
32年もの間、休む暇さえなく、走り続けたんです。..グスっ
今はソっと静かにしておいてあげましょう。
寂しがり屋さんなので出雲大社へ訪れた際は是非!大社駅まで会いに来てあげてください。
見た目は感情や表情のない鉄の塊ですが、きっと心から喜んでくれているハズです。
旧・大社駅「D51形蒸気機関車」の詳細
正式名
D51形774号
大きさ
長さ(総長):19.73m
横幅:2.93m
高さ:3.98m
重さ:78.37t
製造年月日:昭和17年9月7日
製造会社:汽車製造株式会社
運行従事年数:32年4ヶ月
生涯走行距離:1072万170.1km
出雲大社線を自転車で走れる??
実は現在も旧大社線の名残りを少し見ることができます。
と、言いますのも旧大社線の線路は撤去されて普通のアスファルトの道になっていますが、実際に電車が運行していた頃に使用されていた線路の制御装置、プラットフォームなどを道の端で見かけることができます。
尚、線路跡は出雲市駅から旧荒茅駅(あらかや)の周辺までで、その先は「ご縁通り(車道)」として旧大社駅に至っています。
自転車はJR出雲市駅でレンタルすることができます。
出雲市駅・東駐輪場「自転車レンタル」
自転車レンタル料金
普通自転車:1日514円(1人1回)
電動自転車:1日822円(1人1回)
貸出し保管台数
普通自転車:20台
電動自転車:10台
出雲市駅・東駐輪場のお問い合わせ先
- 住所:出雲市駅北町10番地2
- 営業時間:9時00分~17時00分
- お問い合わせ先電話番号:0853-30-1560
出雲市内には自転車をレンタルできるスポットが他に2つか3つほどあり、JR出雲市駅はその内の1つとなります。(その他のレンタル可能場所:松江駅、雲州平田駅、スサノオホール分館..etc)
出雲大社の付近周辺でも自転車をレンタルできるお店がいくつかあります。
- 吉兆館、観光センターいずも、古代出雲歴史博物館、出雲大社前駅..etc
一畑電車・出雲大社駅前の自転車レンタルに関しては当サイトの以下↓の別ページでご紹介しております。
ただし、自転車は基本的に借りたお店に返すのが基本となっていますので、旅行のスケジュールをよくよく練る必要があります。
ご興味のある方やスケジュール的に時間の許せるは是非!出雲市駅から旧大社駅まで自転車でサイクリングか、ハイキングがてら歩いてみるのも良いかもしれません。
ただし歩くとなると1時間40分ほどかかります。(地図↓)
- JR出雲市駅から出雲大社までの所要時間:約1時間40分
- 距離:約8Km
出雲大社から旧大社駅へアクセス(行き方)
出雲大社からは徒歩でも充分にアクセスすることができます。
徒歩の場合は、勢溜から宇迦橋の大鳥居を目指して歩きます。
宇迦橋の大鳥居からさらにそのまま道沿いに直進すれば旧・大社駅が見えてきます。
徒歩での所要時間:約15分
距離:約1.2Km
タクシーでの所要時間:5分
タクシー料金:1000円以内
バスの最寄り駅:「JR出雲市駅・出雲大社・日御碕・宇竜行き」旧JR大社駅バス停を下車、徒歩約1分
バスでの所要時間:8分
JR出雲市駅から旧大社駅へアクセス(行き方)
バス
JR出雲市駅から「出雲大社・日御碕・宇竜」で「旧JR大社駅」下車、徒歩1分
JR出雲市駅から「大社線(南原経由)」で「ショッピングタウンエル」下車、徒歩3分
所要時間:約30分
運賃:470円
タクシー
タクシー料金:約4000円以内(混雑時期除く)
JR出雲市駅からタクシーでの所要時間約25分
JR出雲市駅から徒歩で旧大社駅までの行き方は上記を参照してください。
- 旧・大社駅駐車場:平面駐車場配備。収容台数約150台
旧・大社駅舎の入場料金・営業時間・定休日
入場料金:無料
営業時間:9時から17時まで
定休日:不定休
旧・大社駅へのお問い合わせ先
住所:島根県出雲市大社町北荒木441-3
TEL:0853-53-2112(出雲観光協会)
禁煙:全席禁煙
ホームページURL:http://www.izumo-kankou.gr.jp/4609
終わりに・・
大社駅の前には、レトロな郵便ポストが立っていますが、残念ながらこの郵便ポストは現在は使用できません。
使用できるレトロ郵便ポストとしては、出雲大社前駅の郵便ポストのみです。
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